【映画】「勝手にふるえてろ」感想 ※追記しました

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気になってた「ギフテッド」がそろそろ公開終了だから見に行ったらまさかの全席完売で(ぎりぎり行動タイプだからたまにやるやーつ)、かなりのショックを受け悲しみの果てに唐突に「勝手にふるえてろ」見に行ったのですが、非常に良かったです!!!2018年1発目これで良かった!!!

 

<あらすじ>

芥川賞作家・綿矢りさによる同名小説の映画化で、恋愛経験のない主人公のOLが2つの恋に悩み暴走する様を、松岡茉優の映画初主演で描くコメディ。OLのヨシカは同期の「ニ」からの突然の告白に「人生で初めて告られた!」とテンションがあがるが、「ニ」との関係にいまいち乗り切れず、中学時代から同級生の「イチ」への思いもいまだに引きずり続けていた。一方的な脳内の片思いとリアルな恋愛の同時進行に、恋愛ド素人のヨシカは「私には彼氏が2人いる」と彼女なりに頭を悩ませていた。そんな中で「一目でいいから、今のイチに会って前のめりに死んでいこう」という奇妙な動機から、ありえない嘘をついて同窓会を計画。やがてヨシカとイチの再会の日が訪れるが……。(映画.comより)

 

原作未読なのですが、本映画については、異様な疾走感でこじらせ系女主人公・ヨシカのメンタルゲロ脚本をうまく表現されておりました。

松岡茉優さんの圧倒的演技力とモブキャラの濃さと快活な編集テンポのマリアージュだったぞ…良かったぞ……

 

以外、ネタバレ含みます。

 

 

 

 

 

 

 

個人的にあんまり恋愛映画好きじゃないのでどうなることかと思って見始めたのですが、どっちかっていうと恋愛はストーリー上のツールであり、ヨシカが妄想世界→現実世界へ孵化していく人間成長物語に思えた。ヨシカは恋愛下手で誰とも付き合ったことなくて処女なのをすごく気にしていて、それを棄てる=ラストでニを受け入れる=赤い付箋が濡れ染まる、ことで一歩成長する。今までの妄想世界に生きる自分に吐き捨てたのが、「勝手にふるえてろ」の一言で、そこで過去の自分と決別して、現実に生きる覚悟をしたのだ、と受け取った。

 

結構オーソドックスな「自分がずっと好きな人と自分を好きだって言ってくれるぽっと出の人のどっちにいくの?いかないの?」って感じの流れで話が進むのですが、そんな流れをつい忘れてしまうくらいヨシカのメンタルゲロっぷりが全体的にすごい。

ヨシカ、もう見てられないくらいのこじらせ系女子で、初恋の人に対しての妄想10年単位で極めちゃってるせいで閉じた内側の世界(妄想)ではこれでもかというくらい饒舌かつ陽気なのに、外側の世界(現実)では内気でコミュ障で全然自己開示できなくて世界を斜め上から見てますワタシ的にアイロニカルな文句や態度垂れ流してて、生き下手なのって愛しい♡わたしに似てる♡とか絶滅した動物に捻じ曲がった自己投影しまくってアンモナイトの化石とか買っちゃってて、なんかもうその様がオタクでばんぎゃるでスクールカーストにも馴染めず生きてきたわたしの古傷をガンガン抉ってきてもーーーーーヨシカーーーーーめっちゃ気持ち分かるけどだめだよだめだってわかってるでしょずっとそこに居たい訳じゃないでしょヨシカーーーーーって自らを抱き締めながら観ていた。つらかった。なので、どっちかというと日常的に生きづらさ感じてるこじらせ系の自覚がある人が見た方がガツンとくると思う。

 

途中まで、ヨシカの妄想と現実がごっちゃになっているせいで、はじめはただの心のシャッター厚めな内弁慶な子なのかなと思ってたのに、それどころじゃなくだいぶヤバイ子だってことがイチに自分が自分として認識されてないと自覚した後(「名前、なんだっけ」事件の後)から発覚して観ていて素直に驚いたし、そこからの世界の均衡の崩れっぷり、濃厚にヨシカと絡んでくれてたモブキャラの皆様が無表情になる怖さ、あのよくわからないアンモナイトの歌と相まって秀逸だった。この10年間どれだけヨシカが、イチに対する妄想を繰り広げることでギリギリ自我を保っていたのか。本能(=なりたい自分、やりたいこと)のままに生きられない臆病で情けない自分を、理性(=妄想)で抑え込んでるという設定で正当化して見て見ぬ振りをしてきたのか。帰宅して、玄関で蹲って泣くヨシカのシーン、アップになる松岡さんの顔が無から哀に徐々に崩れていく様、恐ろしいほどだった。良かった。

ここの演出が良すぎたおかげでその先見てても「これまた妄想なんじゃ…?」ってハラハラさせられたよ…ヨシカも言ってたけどね公園で「これって現実…?」って。その台詞が鑑賞者にも納得感を持って受け入れられるのは、ひとえに前半の妄想世界の演出の自然さ=妄想の二重構造(イチとの妄想をしている自分を発露してそれが自分だと周囲に認めてもらっている妄想)の描き方やテンポが素晴らしかったのだと思う。

 

個人的に同級生のタワマンに遊びに行った時のエピソードが印象的で、ヨシカのこじらせた内面がフルに発揮されてた!自分からイチに雑談を振れるわけでもなく、周囲の女子のように食卓に気を使える訳でもなく、ハッと気付いて皿を洗おうとしたら「空気読めよ」的な蔑みを受け、なんかイチをロックオンしてたやたら積極的な女のようにモーションをかけることもプライドが許さず、結局、気が狂ったように天然王子の絵を描くしかできない。現実の世界では何もできなくて、妄想の世界に閉じこもるしかできない。そんなふがいない自分に絶望しかけてたらイチが話しかけてくれて、昔のことも覚えててくれて、まさかの話も弾み、おやおや?まさか?妄想が現実とリンクする?………と思いきやの「名前、なんだっけ」事件ですよ!!!!!いや冷静に考えたらまあそりゃショックだけど、ここからリスタートすればええやんって思うんだけど、ヨシカにはそれができないんですよ!!!!!だってまさか名前すら知らない=わたしをわたしと認識してくれてないなんて彼女は予想もしてなくて、その衝撃ったら10年以上彼女を支えてくれてたあたたかな希望を一撃で打ち砕くもので、妄想世界から強制ログアウトさせるコマンドみたいなもので、もうそりゃあ辛いし悲しいし何より恥ずかしいし認めたくないよね!!!!!でもついに認めなきゃいけなくなったんだよね!!!!!わかるよ!!!!!自分と向き合うのしんどいよね!!!!!!って思って観ながらわたしもめっちゃ泣いてました。個人的にここが本作ピーク。

 

ニは全然かっこよくないしいやなんでお前そこでそれやっちゃうの?ってイライラさせられるシーンまみれだったし全くもって惹かれないけど、本作においてヨシカをヨシカとして認識してくれてるのってニとクルミとオカリナだけだったから、まじで大事にしろよと思いました。中盤、クルミちゃん居て良かったね〜〜〜良い友達持ったね〜〜〜って涙ぐんでたから、最後仲直りフラグ立ててくれてて心が救われた。ヨシカよ、あの子は一生もんの友達だからまじで大事にしろよ(親の目線で)。

 

オカリナ役の片桐はいりの存在感がすごかった。最後、カッパ着てコンビニ店員と並んでるの、めっちゃ怖かった。笑

 

昨年見たスウィート17モンスターに似てるって声も聞きますが、わかります。未熟な自分を認めて受け入れて、一歩成長するっていう点では描いてるテーマ一緒かなと。ただ、アラサー女でそれやるとこうも痛々しくて身を削るような話になっちゃうのね、という…自己承認は歳若いうちにやっとこうね………

 

パワフルで良い映画でした!

ギフテッドリベンジしてきます。